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さて、太古からの歴史の中で、想像を遥かに超えた自然の力によって恩恵を受けたり被害を受けたりを繰り返して現在に至りました。そして、我々はこれからもきっと未来に向けて生きて行くことでしょう。人間には、知恵があり、理性があります。お互い心を通わせ、助け合い、励まし合い、慰め合い、許し合い、褒め合い、称え合い、困難を乗り越えて来ました。神代から現代まで、人間は血縁や地縁などの縁(えん・えにし)を結び助け合いながら生きてきました。日本人は、縁を運命的なものとして受け入れ、良い縁を結べるように精進努力し、家族や地域社会の繁栄の為に一所懸命に生きることを美徳としました。このことは、日本の文化にもよく表れています。 戦後の日本は、憲法による個人の権利の保障がことさらに強調され、人間としての義務よりも個人の自由が優先される傾向が強まり、ゆがめられた自由主義や民主主義が定着し、特にバプル経済期以降は、「赤信号、みんなで渡れば怖くない。」、「言った者勝ち、やった者勝ち」、「モンスター・ペアレンツ」という言葉をよく耳にするような社会になってしまいました。家庭でも、個人が優先され、親が子どもを虐待したり、相続を巡って争ったり、亡くなった家族を放置したり、かえって人間の尊厳を否定する事件が後を絶ちません。その家庭に欠けていることは、「自分たちの祖先を敬わない」「神仏を敬わない」「人を敬わない」ということです。日本人が、長い歴史の中で培ってきた縁を否定し、目には見えないけれども家族や地域社会を結び付けていた縁を断ち切ってしまい、家族の崩壊や地域社会の崩壊を生みました。便利と経済性優先の国は、国民の心を貧しくさせ、やがては国家そのものの崩壊に繋がって行きます。つまりそこには「温かい心」が育たないのです。いくら社会保障制度を充実させても、「温かい心」が無ければ何にもならないでしょう。「温かい心」は、家族や地域社会の人々との信頼の絆、つまりは良縁があってこそ備わるものなのです。 平成23年9月1日 |